私共は、クラスリン被覆ピットや被覆小胞の裏打ち蛋白であるAP2複合体がシグナル蛋白の一つであるShcに結合することを既に明らかにしてきた。そこで、本研究では、上皮成長因子(EGF)受容体のインターナリゼーションに関わるShcの機能を検討した。AP2はShcの346-355位のアミノ酸(RDLFDMKPFE)に結合するが、合成ペプチドを用いた結合実験により、349と354位のフェニルアラニンがその結合に必要であることが明らかとなった。そこで、epitope-tagを付加した野生型および349と354位のフェニルアラニンをアラニンに改変した変異型Shcを組み込んだアデノウイルスベクターを作製して、COS細胞にこれらの蛋白を過剰発現させて、以下の検討を行った。AP2は刺激依存性に野生型Shcに結合したが、変異型Shcへの刺激依存性の結合の増加は認められなかった。また、野生型Shcを過剰発現させた細胞ではEGF受容体と共沈するAP2が刺激依存性に増加したが、変異型Shcを発現させた細胞では刺激依存性の増加はみられなかった。このことより、Shc-AP2複合体が刺激依存性にEGF受容体に結合することが明らかとなった。放射標識EGFを用いた検討では、変異型Shcを発現させた細胞でインターナリゼーションが低下した。また、EGF受容体上のメジャーなShc結合部位である1148位のチロシンをフェニルアラニンに置換したEGF受容体を過剰発現させたCHO細胞でも放射標識EGFのインターナリゼーションが低下した。細胞免疫染色法では、野生型Shcを過剰発現させた細胞でEGF受容体の被覆ビットや被覆小胞への集積が亢進していた。 以上の結果より、ShcがEGF依存性のEGF受容体インターナリゼーションにおいて機能することが明らかとなった。
|