GTP結合蛋白の一つであるダイナミンIIとシグナル蛋白Shcの上皮成長因子(EGF)受容体のインターナリゼーションにおける役割を検討した。改変型ダイナミンIIを発現させた細胞を用いた検討で、pleckstrin homology(PH)ドメインを欠失させた変異型ダイナミンIIはEGF受容体に結合するものの、二量体を形成できず、このためGTPase活性は著しく低下し、この変異体を発現させた細胞ではEGFのインターナリゼーションが著明に低下した。また、proline-richドメインを欠失させた変異型では、EGF受容体への結合が低下しており、二量体を形成するものの多量体を形成できず、GTPase活性も低下した。一方、被覆ピットや被覆小胞の裏打ち蛋白であるAP2がShcに結合するが、Shcの349と354位のフェニルアラニンがその結合に必要である。野生型Shcを発現させた細胞では、EGF刺激依存性にShc-AP2複合体の形成が増加し、この複合体がEGF受容体に結合した。一方、349と354位のフェニルアラニンをアラニンに改変した変異型Shcを発現させた細胞では、このような変化がみられなかった。放射標識EGFを用いた検討では、変異型Shcを発現させた細胞でインターナリゼーションが低下し、細胞免疫染色法では、野生型Shcを過剰発現させた細胞でEGF受容体の被覆ピットや被覆小胞への集積が亢進していた。以上の結果より、EGF依存性の受容体インターナリゼーションにおいて、ShcはAP2とEGF受容体の結合を仲介し、被覆ピットへのEGF受容体の集積に関与すること、およびダイナミンIIは被覆小胞の形成に関与するが、その機能にはPHドメインとproline-richドメインの両方が必要であることが示唆された。
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