研究概要 |
成長ホルモン(GH)の産生分泌は視床下部ホルモンであるGHRHによって促進される。このGHRHの作用はGHRH量によってのみ規定されるわけでなく、GHRH受容体(GHRHR)によっても修飾される。このことは、ヒトにおいてGHRHR変異による成長障害例が報告されていることからも明らかである。一方、GHRHR数の変化によってもGHの産生分泌は影響を受けることが想像されるが、その主たる調節点であるGHRHRの発現調節機構については全く不明であった。これを明らかにする目的で、私どもは、ヒトGHRHR遺伝子の5′上流配列をクローニングし、RNase Protection Assayにより転写開始点を決定した。その結果、GHRHR遺伝子プロモーターには典型的なTATAboxはみられないこと、エンハンサー領域には、GH、PRL産生細胞に特異的な転写因子でGH発現を促進するPit-1の結合エレメント様塩基配列が10、CREが1つ、さらにhalf siteのERE,GREが存在することが明らかになった。また、mobility shift assay、foot print実験において、実際に、Pit-1蛋白がこれらのPit-1結合エレメント様塩基配列へ結合することが認められた。ルシフェラーゼアッセイによる5′上流配列の機能解析を行ったところ、GHRHRの遺伝子発現はGHを産生するGH_3細胞では活性化されるが、対照のCos細胞では活性化されないこと、しかし、Pit-1を同時に発現させると、Cos細胞においても活性化されることを見い出した。この組織特異的発現に必須である領域は、GHRHR遺伝子の5′上流配列のデ-リーション実験より、転写開始点から上流約150塩基の、最も近位のPit-1結合エレメントを含む領域であることが明らかになった。これらの成績は、Pit-1結合エレメントが実際に機能し、GHRHRの組織特異的発現を規定していることを示しており、Pit-1によって、GHだけでなく、GHRHR発現も連動して調節される合目的的なGH産生放出促進機構の存在が示唆させた。
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