研究概要 |
体液中の1,5AG濃度の確認と、微量サンプルを用いた1,5AG測定系開発のための基礎検討を行った。 1. 正常人および糖尿病患者より、汗、唾液、涙などを採取し、主にGC-MS法により1,5AG濃度を測定し、基準値を作製した。また75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中の、唾液中1,5AG値の経時的変化を調べた。また、同一人での日差・日内変動や生活条件に基づくバラつきを検討した。患者からの検体採取時には同意を得た上で施行した。涙液と汗の1,5AGは現感度の1,5AG測定法によっても、血清1,5AGレベルの10〜70%の範囲で測定可能な量が検出され、測定値の変動係数CVも30%前後に収まった。血清1,5AG値との相関もr=0.70前後であり、日差・日内変動も比較的小さいものであった。一方、唾液中の1,5AGは、口腔内夾雑物の影響が極めて大きく、検体の濾過処理を必要とした。5℃下で分画分子量5000〜10000の加圧限外濾過を10分間加えたところ、CV値の大幅な改善をみた。しかし、本法では、1,5AG濃度の大幅な減少が認められ、分画膜の改良が必要であったが、理想的なレベルにまでは達しなかった。なおOGTT時の唾液中1,5AG値は食事による急性の影響を受けなかった。 2. 微量1,5AGへの感度を上げるために、PRODの純度を上げ、HKまたはGKの対PROD比を変えることで、DA-64発色反応を微細なものとすることを検討した。しかし、開発中に、HK,GKの一部ロットで1,5AGに高親和性をもつものがあることが判明し、この方面の測定系開発は断念した。反面HK,GKへの1,5AGの親和性の詳細な検討によりグルコースと1,5AGとの相互作用に関する研究が展開し、特に膵β細胞における1,5AGの生理的役割の解明が進んだことは大きな収穫であった。膵β細胞の培地を用いて、1,5AGの微量測定系の基礎検討も進んだ。
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