研究概要 |
研究目的:近年、レムナントリポ蛋白(以下、レムナント)の動脈硬化惹起性が注目されている。安定同位体による内因性標識法を使ったヒトリポ蛋白代謝実験でレムナント代謝を詳細に検討することによりその代謝異常のメカニズムを解明し、レムナント代謝異常症の予防と治療法の確立を目的とする。本年度は、III型高脂血症患者3名を対象に以下に示したアポ蛋白代謝実験を施行した。 方法:1.実験対象者は入院の上、早朝空腹時に^2H_3-leucine、600μg/kg静注し、引き続いて12μg/kg-minで14時間持続点滴した。点滴開始時とその後10分、1、2、3、4、6、8、10、12、14、18、24、36、48、72、96、120時間に採血した。2.抗アポ蛋白B-100-immunoaffinity chromatographyの作製;モノクローナル抗体(Mab JI-H、日本抗体研究所より供与)を常法によりCNBr-activated Sepharose 4Bゲル(Pharmacia)に10mg/mlの割合で結合させた。3.レムナントの分離;超遠心法にてVLDL,IDL,LDLを分離した。リポ蛋白分離後、Phosphate buffer salineにて透析後、上記immunoaffinity column(gel volume 20cc)にかけ、非結合分画(レムナント分画)を回収した後、3M NaSCNにて結合分画(非レムナント分画)を分離した。4.アポ蛋白の分離;それぞれのリポ蛋白分画を5mM NH_4HCO_3にて透析し、凍結乾燥、脱脂した。その後、gradient SDS-PAGE(5-15%)法によって、アポ蛋白B-48、B-100を分離した。 結果・結論:1.VLDL分画よりもIDL分画でレムナントが相対的に多く認められた。これは、レムナントがIDL分画でうっ滞していることを示し、その代謝上の機序としては異化の遅延が考えられた。次年度では、上記の点についてラベルしたアミノ酸の蛋白内出現率(tracer/tracee ratio)をガスクロマトグラフィー・質量分析計で測定し、その後代謝モデルに当てはめてレムナントの代謝パラメーターを算出する予定である。
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