研究概要 |
GIPはグルカゴン、セクレチンファミリーに属する消化管ホルモンでGLP-1とともにインクレチンとして膵β細胞からのインスリン分泌を促進することが知られている。糖尿病患者やGKラットではGIPに対するインスリン分泌障害が認められ、GIPの糖尿病発症への関与が注目されている。前年度は、GIP受容体欠損キメラマウスおよびヘテロマウスの作成に成功したことを報告したが、今年度は、そのGIP受容体欠損ノックアウトマウス(-/-マウス)の作成に成功し、これを用いて、GIPのインスリン分泌および糖代謝における役割の解明を試みた。まず、バッチインキュベーション法を用いて、単離ラ氏島からのインスリン分泌におけるGIPの影響を検討した。グルコース8.3mM存在下 GIP100nM刺激での単離ラ氏島よりのインスリン分泌は、野生型マウス(+/+マウス)ではGIP刺激非存在下に比べて4.6倍に増強するのに対し、-/-マウスではGIPに対する反応は全く認められず、-/-マウスのGIP受容体の機能消失を確認した。次に、+/+マウスと-/-マウスの空腹時血糖、体重を週齢を追って観察したが、12週齢まで両者とも有意差は認められなかった。さらにOGTT,IPGTTを行い、glucose homeostasisに対する影響を検討した。GTTは、18時間の絶食後に、グルコースを2g/kgを投与した。OGTT時の空腹時血糖は+/+マウス98±5mg/dl,-/-マウス93±5mg/dlと両群間で有意差を認めなかった。しかし、糖負荷後の頂値は+/+マウス312±24mg/dl(10分)、-/-マウス406±28mg/dl(20分)と-/-マウスで有意な高値を示した。IPGTTでは空腹時血糖、頂値共に+/+マウス、-/-マウス間に有意な差を認めなかった。以上のことから、この-/-マウスは耐糖能異常を来していることが明らかとなった。今後、さらに、加齢、高カロリー食、ストレス等による影響や、GLP-1との比較を分子レベルで検討する予定である。
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