研究概要 |
本年度は膵島抗原の発現に及ぼすHLA分子の影響を検討する目的で、soluble HLA(S-HLA)の血中動態に関して検討を加えた。発症前後から経時的に採血したIDDM患者の血中S-HLAの濃度は発症と同期して低下し、数ケ月間の後、正常化した。soluble HLAはIDDMの抗原提示において防御的な影響を与える可能性が示唆された。この成績はClin Immun and Immunopathol 85:246-252,1997に発表された。 次いで、IDDM患者における膵島抗原反応性自己抗体の特徴を明らかにする目的で、自己抗体のエピトープマッピングを行った。膵島抗原反応性自己抗体はIDDM患者[急性発症IDDM,および、slowly progressive IDDM(SPIDDM)]に検出されるGAD抗体(GADAb)を対象にとした。エピトープを明らかにするため、GAD67およびGAD65からなる3種のキメラ[GAD65(1-244)AA/GAD67(253-369)AA/GAD65(360-585)AA:GAD-A,GAD65(1-442)AA/GAD67(452-594AA:GAD-E,GAD65(1-537)AA/GAD67(547-594)AA:GAD-G]クローンを作成した。このキメラクローンによりGADのキメラ蛋白をin vitro transcription/translationにより作成し、IDDM患者血清との反応を免疫沈降法により検討した。その結果(1)急性発症IDDMにおいてはその大部分のエピトープがGAD65分子の中心側(244〜360位AA)に存在することが明らかとなった。さらに一部で症例では中心側に加えて422〜585位AAがエピトープでもあった。(2)SPIDDMにおけるGAD抗体のエピトープはGAD65分子の244位AAよりさらにンN端側にも存在することも示唆された。
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