インスリン依存型糖尿病(IDDM)は、膵島細胞に対する自己抗体が検出され、膵島にT細胞の浸潤を認めることなどから自己免疫的機序によるβ細胞障害が起こっていると考えられている。膵島自己抗体にはグルタミン脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)抗体、IA-2抗体、ICAなどがあるが、なかでもGAD65に対するGAD65抗体は最も代表的な自己抗体である。 本研究ではIDDMのβ-細胞障害における膵島抗原の役割を探る目的で代表的な膵島抗原であるGAD65分子に対する自己抗体すなわちGAD65抗体の免疫学的特徴、特にエピトープに関してGAD65分子とGAD67分子のキメラを作成し検討を加えた。その結果、急性発症IDDMでは、その自己抗体のエピトープは中心側の2ヶ所すなわち244〜360残基および244〜443残基に存在すること、このepitopeはconfomationalなものであることが明らかとなった。また急性発症IDDMと臨床像の異なるslowly progressive IDDMにおいては、244〜585残基に加えN端側の1〜83残基においてもエピトープの局在を認めた。このN端側のエピトープはlinear epitopeの特徴を有していた。 これらの成績より急性発症IDDMとslowly progressive IDDMは異なったGAD65抗体のエピトープを有していることが明らかとなった。N端側にエピトープを有する自己免疫疾患としてはstiff-man症候群が知られている。この疾患におけるGAD抗体はGADを酵素活性を抑制し、その病因に関系していることが明らかとなっている。したがってslowly progressive IDDMで認められGAD65抗体がβ細胞の障害に関連を有している可能性があり、今後さらにin vitroの系における検討をすすめたい。
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