研究概要 |
高比重リポ蛋白(HDL)の抗動脈硬化作用が知られており,そのメカニズムは,抹消細胞からコレステロールを引き抜くコレステロール逆転送によると考えられている.HDL受容体はコレステロール逆転送系に重要な役割を持つと考えられているが,その構造と機能,発現調節の詳細は未だ明らかではない. 本研究では,我々がクローニングに成功したHB2(HDL binding protein 2)の発現調節を調べるために,ヒト単球由来THP-1 cellを用いて,各種サイトカイン等の影響を検討した.InsulinおよびIGF-1ではHB2の発現に変化はみられなかったが,TNF-α,IL-6,MCSFの4日間処理では,THP-1でのHB2の発現は顕著に低下した.胆汁酸はLDL受容体などの発現に影響がみられることから,HB2発現に対するtaurocholate(TCA),chenodeoxycholate(CDCA)およびursodeoxycholate(UDCA)の影響を検討した.各胆汁酸0.5mM,6時間処理により,TCAでは1.3倍,CDCAでは2倍の有意な増加がみられた.一方,HMG-CoA還元酵素阻害剤simvastatinは肝のHB2活性を抑制することが報告されており、家兎にHMG-CoA還元酵素阻害剤simvastatinを15mg/kg/dayと生理食塩水(対照群)の3週間投与では,投与群で肝臓と肺中のコレステロールに減少が認められ,HB2mRNA量は,対照群に比べ肝臓と肺において有意に減少し,転写レベルでの抑制が示唆された. 以上,HB2の発現は,IL-6,TNF-α,MCSF等のサイトカインで減少し,TCAやCDCAのような胆汁酸で増加した.また,家兎に対するsimvastatin投与では肝臓と肺でのHB2発現が減少したことから,コレステロール代謝とHB2の機能の関連が示唆された.
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