研究概要 |
高比重リポ蛋白(HDL)受容体は,コレステロール逆転送系において細胞とHDLの相互作用に関わる細胞表面に存在する特異的部位である。我々はHDL受容体の候補としてFidgeらの単離したHDL結合蛋白の1つHB2(100kDa)のクローニングに成功した。本研究では,その機能と発現調節機構を解明するため,各種サイトカイン,胆汁酸,脂溶性ビタミン等のHB2発現への影響を検討した。THP-1細胞においてフォルボルエステル(PMA)処理で,HB2発現は約5倍程度に増加し,アセチルLDLを用いた細胞へのコレステロール負荷によりその発現が抑制された。TNF-α,IL-6,MCSF処理では,THP-1でのHB2の発現は顕著に低下した。胆汁酸はLDL受容体などの発現に影響がみられることから,HB2発現に対する影響を検討した。各胆汁酸0.5mM,6時間処理により,taurocholate(TCA)では1.3倍,chenodeoxycholate(CDCA)では2倍の有意な増加がみられた。レチノールおよび1,25-vitamin D_3処理ではHB2の発現に変化はみられなかったが,25-vitamin D_3の50nM処理でHB2の発現が増加する傾向がみられた。また,α-トコフェロールではPMA処理してマクロファージ化した細胞では,100μMで有意にHB2の発現が減少した。 家兎にHMG-CoA還元酵素阻害剤 simvastatinを15mg/kg/day,3週間投与で,肝臓と肺中のコレステロールに減少が認められ,HB2mRNA量は,対照群に比べ肝臓と肺において有意に減少し,転写レベルでの抑制が示唆された。
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