研究課題/領域番号 |
09671095
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東條 有伸 東京大学, 医科学研究所, 講師 (00211681)
|
研究分担者 |
佐藤 裕子 国立国際医療センター研究所, 室長 (10137713)
浅野 茂隆 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50134614)
|
キーワード | CML(慢性骨髄性白血病) / Dendritic cell (樹状細胞) / Ph chromosome(染色体) |
研究概要 |
【背景・目的】慢性骨髄性白血病(CML)の腫瘍クローンは多能性造血幹細胞に由来し、Tリンパ球を除くほとんど全ての血球を巻き込んでいる。腫瘍クローンはPh染色体を有し、この核型異常の結果生じるBCR-ABL融合遺伝子産物(p210)が発症に関与する。p210自身あるいはp210により誘導される蛋白質は腫瘍特異抗原となりうるため、自己のTリンパ球を用いてPhクローン特異的免疫応答を誘導できる可能性がある。そこで私は最も強力な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)に着目し、CMLにおける骨髄DC前駆細胞の定量とそのクローナリティ、さらに末梢血DC機能について検討した。 【方法と結果】CML患者(n=10)および健常人(n=6)の骨髄CD34細胞を半固形培地でGM-CSF/SCF/TNF-α/IL4存在下に培養し、DC前駆細胞(CFU-DC)を算定した。CMLでは顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU-GM)に対するCFU-DCの比率が健常人に比し有意に低下していた。またDCコロニー形成細胞の核型分析では、CMLにおいて解析可能な全ての核型がPh陽性を示し、RT-PCR解析ではBCR-ABLmRNAとDC特異的なCD83mRNAの同時発現を認めた。次に末梢血より免疫磁気ビーズ法で、CD3^-/11b^-/16^-/4^-の未熟DCを分離し、GM-CSF/TNF-α/IL4存在下で短期培養後に同種混合リンパ球反応を行った。未治療CML(n=5)では、Tリンパ球に対するDCの抗原提示能は健常人と比較して明らかに低下していた。表面マーカーを解析した結果、未治療CMLの末梢血DCではCD40/80/HLA-DRの発現が低下していた。いっぽうDCの短期培養時にIFN-αを添加した3例中2例において部分的な抗原提示能の修復が認められた。IFN-α治療で細胞遺伝学的完全寛解を得ている2例では、末梢血DCの抗原提示能は健常人と同等であった。 【考察】CML患者のDCはPhクローンに由来し、Ph特異的免疫応答を誘導するためのアジュバントとして有力な細胞資源になると考えられるが、臨床応用にはその量的増幅や機能的修復が必要である。特に後者についてはIFN-α療法との関連から検討する余地がある。
|