分泌蛋白であるアルファ2プラスミンインヒビター(α2-plasmin inhibitor、以下α2Plと略す)の欠損症家系の解析により、1塩基の挿入によるフレームシフトにより、C末端の12個のアミノ酸が178個の別のアミノ酸に置換が確認された。これまでの研究により、変異分泌蛋白は粗面小胞体の膜を通過して、膜内に移行するが、粗面小胞体の内に留まることが確認されている。 今回は、粗面小胞体を用いて小胞体内に留まる変異蛋白の分解メカニズムあるいは分解に関与するプロテアーゼについて研究した。 正常そして、変異α2PlcDNAを、T7のプロモーターを上流に持つベクターpBlueScriptに挿入した。T7のプロモーターを利用して、mRNAを合成し、^<35>S-メチオニン、アミノ酸混合物(メチオニン抜き)、粗面小胞体を加え、ウサギの網赤血球ライセートを用いたin vitro translationの系にて、翻訳を行い、蛋白合成させた。シグナルぺプチドがはずれたバンドの他に、糖鎖付加部位が4ヵ所に付加された、計5本のバンドが確認された。正常は全く分解されなかったが、変異蛋白は、30分から1時間で分解された。変異蛋白(α2Pl-Naraなど)の分解は、セリンプロテアーゼのインヒビター(TPCKやTLCKなど)により抑制された。 同時におこなったstable cell lineの実験では、変異蛋白は分解され、カルネキシンとの結合がみられた。ユビキチンを介するプロテアソームの関与は確認できなかった。
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