BCL6遺伝子は染色体q27に局在する遺伝子で、zinc-finger proteihに属する転写因子をコードする。悪性リンパ腫に高頻度に見られる染色体の3q27転座に伴い再構成を示す。染色体転座はBCL6の5'転写調節領域に集中して起こり、これに伴うBCL6の発現異常がリンパ腫発生に関与しているものと推察されるが、詳細は明らかでない。 1.我々は、まずin situ hybridization法にてこの転座を検出するシステムの確立に成功した。この方法を用いると、通常の染色体分析で検出困難な症例においてもBCL6転座を証明することが可能であった。 2.BCL6遺伝子再構成を有する細胞株2株の樹立に成功した。2株とも免疫グロブリン・BCL6の融合遺伝子を発現しており、リンパ腫発生におけるBCL6の役割を検討するのに有用と考えられた。 3.54例の悪性リンパ腫症例につきBCL6の再構成の有無を検討した。22%の症例で再構成が見られ、全例がB細胞型であった。多くはびまん性大細胞型リンパ腫であったが、mantle cell lymphomaの一例においても再構成が見られた。また、転座の相手は免疫グロブリンの遺伝子座に限らず、6p、9pなど多様であった。BCL6遺伝子再構成を示す悪性リンパ腫の多様性が示唆された。 4.BCL6の生理的機能を明らかにする目的で、BCL6ノックアウトマウスの作製を行った。BCL6ノックアウトマウスは、生下時は特に異常を認めなかったが、その後、成長遅延を示し7-8週までにほとんどが死亡した。B細胞の機能については、T細胞依存抗原で刺激後、低親和性の特異IgG1、IgM抗体の産生、脾臓における一次ろほうの形成は正常に認められたものの、胚中心の形成は全く見られず、BCL6は抗体産生細胞への分化には必須ではなく、胚中心の形成に必須の因子であることが明らかとなった。
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