研究概要 |
造血細胞の増殖と分化を調節するエリスロポエチン(Epo)とIL-3の受容体につき検討を行い,Epo刺激によりIL-3受容体のβ鎖がチロシンリン酸化を受けSTAT5と結合することや,STAT5の活性化に必要な694番目のチロシンを置換した変異体はIL-3受容体に持続的に結合し,IL-3によるSTAT5の活性化を阻害することを見出した(Chin H.et al,Blood89:4327-4336,1997)。また,細胞内アダプター因子CrkLがこれらの受容体の活性化によりチロシンリン酸化を受けるとともに,同様にリン酸化を受けるShc・Syp・Cbl等のシグナル伝達因子と結合し,Epo受容体と複合体を形成する事を見出した(Chin H,et al,BBRC 239:412-417,1997)。さらに,SrcファミリーのLynがSH2領域等を介して細胞内でEpo受容体と結合し,Epo受容体自身やSTAT5のチロシンリン酸化を誘導し,さらにはSTAT5のDNAへの結合やその標的遺伝子の転写の活性化をも誘導しうることを示した(Chin H. et al,Blood 91:3734-3745,1998)。また,CrkLの機能に付き検討を行い,CrkLはC3Gを介してインテグリンの活性化による細胞接着亢進をもたらすことを見いだした(Arai A.et al,Blood,in press)。さらに,CrkLを介して活性化されるシグナル伝達経路を解析し,CrkLはEpo等のサイトカイン受容体によるRas・Raf-1・MEK・Erk経路を介してElk-1の活性化とc-fos遺伝子の発現誘導に至るシグナル伝達経路の活性化に関与しうることを見出した。この経路の活性化は,CrkLのSH2領域およびC3Gとの結合に必要なN末端側SH3領域のみが関与し,cdc25領域を欠失したC3Gにより抑制された事より,CrkL/C3G複合体がCrkLのSH2領域を介して活性化されたサイト力イン受容体複合体に結合することで細胞膜に動員されることによるものと考えられる(Nosaka Y.etal,submitted for publication)。
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