研究概要 |
我々はトロンボキサンA_2(TXA_2)産生は正常でありながら外来性TXA_2対して血小板が凝集しないトロンボキサン不応症を1993年に世界で最初に報告した。この症例の血小板は外来性TXA_2との結合は正常でありながら、TXA_2で刺激してもイノシトール三リン酸やカルシウム動員が惹起されないことから、TXA_2受容体からGq蛋白の活性化にいたる刺激伝達系の異常と考えられていた。その後同様の症例を計6症例経験したことから、今回はその病因を遺伝子学的に解明した。すなわち、患者血小板よりAGPC法にてtotal RNAを抽出し、humanTXA_2 receptorのprimer(forward primer,5'-GTGTGCAGCATCGGCCTGATG-3'-reverse primer,5'-GAGGGGCGCTCT GTCCACTT-3')を用いてRT-PCR法にてTXA_2受容体の異常の有無を解析すると、全例Arg^<60>のLeuへ置換を認めた。このうち、4例はhomozygote.2例はheterozygoteであり、後者ではTXA_2による血小板凝集は欠損しているにもかかわらず、IP_3産生やカルシウム動員は正常であった。以上のことより、本症においてはTXA_2受容体の,Arg^<60>→Leuへの変異が現在報告されている唯一の異常であること、またTXA_2刺激時にはカルシウム動員と血小板凝集が必ずしもpararellではなく、heterozygote症例ではmutant type receptorがphospholipase C活性化以外のメカニズムで血小板凝集を阻害している可能性があることをを明らかにした。
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