研究概要 |
免疫抑制療法を受けた多数の再生不良性貧血症例について末梢血リンパ球におけるheat shock protein(hsp72)の発現をフローサイトメトリーで検討した. その結果,シクロスポリン療法に反応して改善した再生不良性貧血患者のリンパ球では,熱ショック後のhsp72の発現が亢進していることが明らかになった. この現象は,再生不良性貧血以外の血液疾患患者ではみられなかった. hsp72の発現はTリンパ球においてとくに顕著であった. したがって,治療前に末梢血リンパ球のhsp72の誘導性を調べることは,シクロスポリンのような免疫抑制剤に対する反応性を予測する上で有用と考えられた. このようなhsp72の易誘導性は,hsp遺伝子の多型性によって支配されている可能性があるため,各患者のhsp70-2遺伝子の多型性を決定した. その結果,hsp70-2対立遺伝子のうち,9.0kbを持つ例(9.0kb/9.0kbおよび9.0kb/8.5kb)は,このアリルを持たない例(8.5kb/8.5kb)に比べてhsp72の熱誘導性が高いことが示された. また,前者は後者にくらべてシクロスポリンに対する反応性が高いことが明らかになった. 一方,熱誘導が亢進している一部の患者では,hsp72がリンパ球の細胞内だけでなくBリンパ球の細胞表面にも検出された.免疫機序による一部の再生不良性貧血症例では,リンパ球の活性化の指標としてhsp72がT細胞内に検出されることに加えて,B細胞の表面にもhsp72が検出されることから,hsp72は何らかの抗原提示にも関わっていることが示唆された.
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