平成10年度に以下のことを目的として、研究を実施した。 1。 新たなレトロウイルスベクターによる遺伝子発現の確認 2。 ストローマ細胞を用いたパッケージング細胞の有用性の検定 3。 SFFVとVSV G蛋白によるシュードタイプウイルスの検定 その結果、以下のような研究結果を得た。 1。 既存のNIH/3T3細胞由来のパッケージング細胞株を用いて、種々のレトロウイルスベクターのウイルス産生クローンを樹立した。これらのクローンの産生するウイルスベクターを用いて、造血幹細胞での導入遺伝子の発現を検討した結果、SFFVのU3領域とMESVのleader領域を組み合わせた、FMEVタイプのウイルスベクターで、未熟な造血細胞において、より良好な遺伝子発現が確認された。 2。 ストローマ細胞株(MS-5)に、gag/pol遺伝子の発現ベクター及びマウスモロニーウイルス(MuMoLV)のenv遺伝子の発現ベクターを遺伝子導入し、ストローマ細胞由来のパッケージング細胞を得た。しかし、ストローマ細胞由来のパッケージング細胞では、NIH/3T3細胞由来のパッケージング細胞に比べて、安定したウイルス産生クローンを得るのが困難であることが、確認された。 3。 水泡性口内炎ウイルス(VSV:インヂィアナ株、ニュージャージー株)のG蛋白をコードするcDNAを得て、VSV G蛋白の発現ベクターを作成した。この発現ベクターを用いて、VSV G蛋白/シュードタイプベクターのの感染力を検定した結果、SFFVとVSV G蛋白により、感染力のあるシュードタイプウイルスができることを確認した。
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