CXCR-4はT-tropic HIV-1のcoreceptorとして作用することが知られているが、骨髄ストローマ細胞が産生するケモカインSDF-1の受容体として造血系および免疫系細胞の分化やホ-ミングに重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、われわれはヒトCXCR-4に対する3種のモノクローナル抗体を作成して、種々細胞でのその発現分布と機能について解析を行った。マウス細胞株にヒトCXCR-4を発現させたtransfectant細胞を抗原に用いてマウスを免疫して3種の抗ヒトCXCR-4抗体、IVR7、AI58、THS123を樹立した。これらの抗体はCXCR-4を発現させたCOS-7細胞と特異的に反応した。THS123抗体による免疫沈降の結果、CXCR-4の分子量は47kDと推定された。Flow cytometryによる解析では、末梢血白血球のうち好中球とNK細胞にはCXCR-4の発現を認めず、T細胞の大部分、B細胞、および単球に明らかな発現を認めた。また、細胞株ではKG-1を除く殆どの血球系細胞株にCXCR-4の発現を認めた。さらに、CXCR-4^+細胞において、SDF-1による細胞内Ca^<++>の上昇とchemotaxisの誘導が観察され、これらはIVR7抗体の添加によって抑制された。CXCR-4は血球系細胞においても遍在的にではなくて、細胞型特異的に発現していることが判明した。とくに好中球が陰性だったことから、骨髄球系細胞における成熟依存的な発現調節が示唆される。SDF-1がむしろ普遍的にしかも定常的に産生されているので、その作用は受容体の発現によって調節されていることが考えられる。
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