トロンボボイエチン(TPO)は血小板を直接活性化しないが他刺激による凝集および放出反応を亢進させることを明らかにしてきた。さらに、血小板内のMAPキナーゼ系に着目し、TPOの作用を検討したところ、TPOはプロテインキナーゼC(pKC)に依存したMEKの活性化をPKCを介さずに亢進させることによりMAPキナーゼ系を亢進させることが明らかになった。しかし、血小板機能との関連性は見いだせなかったので、もう一つのMAPキナーゼファミリーであるp38 MAPについてもTPOの影響を検討した。P38はトロンビン(Th)刺激により活性化されたがPKCの活性化剤であるPDBuによっては活性化されなかった。また血小板をアスピリン処理してもTh刺激によるp38の活性化は全く影響を受けなかった。TPOはそれ自体p38を活性化しなかったが、Th刺激によるp38の活性化を亢進させた。TPOはまた、Th受容体アゴニストペプチド(TRAP)、トロンボキサンA@@S22@@E2アナログ(STA@@S22@@E2)、コラーゲン、GPVIのクロスリンキング、ADPやエピネフリン刺激によるp38の活性化も亢進させた。TPO刺激はp38の下流にあると考えられるHsp27やホスホリパーゼA@@S22@@E2の燐酸化を生じなかったが、Th刺激によるそれらの燐酸化を亢進させた。P38の特異的阻害剤であるSB203580(SB)はそのような燐酸化を強く阻害した。SBは完全ではないがADPやTh刺激による血小板凝集およびTPOによる亢進作用を阻害した。これとは反対に、TPOはPDBu刺激による血小板凝集を亢進させたが、SBはそれを阻害しなかった。以上の結果から、p38MAP系はTPOが他刺激による血小板凝集を亢進させるメカニズムに関与していると考えられた。このようにMAPキナーゼ系とp38MAPキナーゼ系はTPOの刺激伝達機構とクロストークを生じ、後者は特に血小板機能に関与していることが明らかとなった。
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