研究概要 |
造血幹細胞の骨髄へのhoming機構解明を目的として、骨髄移植後の造血幹細胞の動態と特徴について検討している。(1)ヒトにおいて、同種骨髄移植後末梢血中に循環している造血幹細胞をCFU-GM assayとHPP-CFC assayで検討したところ、移植前には認められなかった末梢血中CFU-GMがday1で6〜73/10mlが認められ、day5で消失し、day14より再び認められた。またDay1末梢血中の骨髄球系コロニーのうちHPP-CFCの占める割合は移植骨髄と比べ有意に高かった(44.3+10.4% vs 11.8+2.1%,n=5,P<0.01)。PCRによる解析では、day1末梢血由来HPP-CFCはdonor typeであった。このHPP-CFC由来コロニーの90%以上から2次コロニーの形成が観察された。Flow-cytometryによる解析では、day1末梢血中のCD34陽性細胞上のCD38陰性率は移植骨髄細胞と比較し、61.0+16.5% vs 9.3+3.5%(n=7,P<0.01)、VLA-4陰性率は81.7+11.4% vs 53.8+7.4%(n=5,P<0.01)と有意に高く、以上より移植後分化傾向のある幹細胞が早期に末梢血より消失し、未分化な幹細胞がより長く末梢血中に留まる傾向がうかがわれた。(2)C57BLマウスにおけるhoming efficiencyに対する接着因子等の影響を検討し、造血幹細胞の骨髄内皮細胞の認識機構に関する解析を開始した。マウスの骨髄移植における移植後24hr以内のseeding efficiencyの詳細な検討を行った報告はないので、まず移植後30min、1hr、2hr、6hr、12hr、18hr、24hrにおける骨髄(femur)中及び末梢血中の造血幹細胞をCFU-S assayとCFU-GM assayで検討した。移植後24hr以内では造血幹細胞は、骨髄中及び末梢血中でなだらかな減少曲線を描き、seeding efficiencyとしては30min:0.0099、2hr.0.0008という結果を得た。今後はこれらの曲線をコントロールとし、幹細胞上に発現しているL-selectin、VLA-4、VLA-56、MAC-1、LFA-1、c-kit、CD34、複合糖鎖、proteoglycanなどを阻害した細胞でマウスに骨髄移植を行ない、seeding efficiencyに対する影響を検討してゆく予定である。
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