研究概要 |
骨髄腫細胞でその発現が特異的に変異しているPax-5遺伝子につき、そのゲノム遺伝子の5'上流領域約1kbのDNA塩基配列を決定した。欠失ミュータント実験の結果から、Pax-5遺伝子の基本的な転写調節に必要な領域は-70〜-820の領域であることがわかった。この領域内に結合する転写因子は、c-Ets,E-47,Ikaros-2(IK-2),Sox-5,GATA-1,GATA-2,GATA-3,IK-1,Oct-1等であることが明らかとなった。まず、骨髄腫細胞株U-266,KMS-5,NOP-2および新鮮分離骨髄腫細胞からDNAを抽出して、Pax-5cDNAあるいはクローニングした5'上流DNA断片をプローベにしてサザンブロット解析を行なった。その結果は、Pax-5+のB細胞株および正常末梢血リンパ球のそれらと比して相違はなかった。更に骨髄腫細胞からのDNAで、5'上流約1kbの領域をPCR法で増幅しDNA塩基配列を決定したが、変異は見出せなかった。そこで、5'上流約1kbの領域に結合する転写因子の発現をRT-PCR法で検討した。骨髄腫細胞(株)で特にそれらの発現に変異はなかった。以上、今のところPax-5遺伝子の5'上流約1kbの領域内には特に変異はなさそうである。現在、更に上流領域をクローニング中である。一方、骨髄腫細胞株KMS-5にCD19cDNAを遺伝子導入しCD19+骨髄腫細胞株を樹立した。これらの細胞は、コントロールのベクターのみ導入した細胞に比してそのin vitro増殖が抑制された。他の骨髄腫細胞株でも検討を加えている。このことは、CD19陰性(CD19-)骨髄腫細胞株にCD19分子の発現を回復させると増殖抑制シグナルを出すことを証言した。
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