研究概要 |
遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary haemorrhagic telangiectasia,HHT)は,多発性の末梢血管形成異常とその部位からの反復性の出血を伴う常染色体優性遺伝疾患である。長年,HHTの病因遺伝子は不明であったが,1994年連鎖解析法によりその病因遺伝子が血管内皮細胞に特異的かつ高レベルに発現しているTGF-βのIII型受容体であるエンドグリンであることが明らかになった。我々は,HHTの4家系を見出し,DNAが入手可能な3家系においてエンドグリンの遺伝子解析を進めてきた。その結果,1家系において160番アミノ酸残基であるアラニン(Ala)をコードするコドンであるGCTがアスパラギン酸(Asp)をコードするGATに変化したクローンを半数に認めた。さらに,この変異はHHTの家系員のみに同定されたため,Ala→Aspが本家系のHHTの病因であることを明かにした(Yamaguchi et al.Thromb.Haemost.,77:243,1997)。さらに,発現実験によりTGF-βの細胞内シグナル伝達の異常の有無を解析するため,ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いてRT-PCR法でエンドグリン全長cDNAを作製し,正常および変異エンドグリン発現プラスミドを構築した。最近,TGF-βの細胞内シグナル伝達はSamd1を介することが示されているので,Dr.Wrana(Sick Children Hospital,Canada)よりSamd1-flagプラスミドの供与をうけ,III型受容体の発現が認められないMCF7細胞を用いてTGF-β刺激によるSamd1の核内移行の有無を蛍光顕微鏡で解析を進めている。
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