プロテインCレセプターは抗凝固因子であるプロテインCの活性化において重要な働きを担っている分子であることが示唆されたので、この分子の発現、機能異常が血栓症の一因となっている可能性がある。そこでその分子異常症の解析を行うために臨床サンプルからpolymerase chain reaction(PCR)によってこの分子をコードする4つのエクソン領域及びプロモーター領域の一部を増幅する系を確立した。塩基配列の変異を検出する方法としてはSSCP(single strand conformation polymorphism)法とダイレクト・シークエンス法の両者を比較した結果、感度の点でダイレクト・シークエンス法が勝っていたので採用した。濱崎直孝教授(九州大学、医学部、臨床検査医学)、坂田洋一助教授(自治医科大学、血栓止血)、佐野雅之講師(佐賀医科大学、内科)らから提供された血栓症患者抹消血のDNAサンプル計151例について今日までに解析を終えたが、現在のところエクソン領域での変異は検出されいない。今後更に検体数を増やして解析を継続する。また、近傍のイントロン領域ではホモ接合体の変異が5例、ヘテロ接合体の変異が3例検出されているので、これらの変異が何らかの機能異常に関与している可能性を今後検討する。また、最近我々はプロテインCレセプターの機能を解析するためにこの分子に対するモノクローナル抗体を多数作製したが、これらのうち7種の抗体がプロテインCの結合を抑制した。クロスブロッキングテストによりこのうち6種に関しては同一のエピトープを認識していることが判明したので現在その同定を試みている。このエピトープをコードする遺伝子領域の変異を検出する方法を確立しスクリーニングを行う予定である。
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