プロテインC経路は主要な血液凝固機構の一つであり、この経路に関与する分子の発現異常、機能異常は血栓症の一因となっている。我々は、血管内皮上に発現しているプロテインCレセプターを同定し、この分子機能解析を進めている。プロテインCはこれまで血管内皮上に形成されるトロンビン。トロンボモジュリン複合体によって活性化され、抗凝固因子として機能するようになるとされていたが、トランスフェクタント細胞を用いた実験によりこの活性化反応をプロテインCレセプターが著しく促進することが明らかになった。またこのレセプター分子に対するモノクローナル抗体を作成し、この分子の生体内分布の解析を行ったところ、これまでプロテインC経路が機能していないと考えられてきた大動脈血管において特に強く発現していることが明らかになった。また、静脈血管や微細血管内おいても発現が検出された。また、機能をブロックするモノクローナル抗体を作成し、様々なタイプの血管内皮上において解析を行ったところプロテインCレセプターは血管内皮上でプライマリー・レセプターとしてプロテインCを高親和性で補足してトロンビン・トロンボモジュリン複合体に提示する機能を有しており、とくに大動脈血管において最も効果的に機能していることが示唆された。この分子の発現および機能異常が何らかの病態に関連しているのではないかと考え、遺伝子変異の検出、種々の腫瘍での発現と検討している。遺伝子変異に関しては現在までに約200検体についてダイレクト・シークエンス法による解析を行っているが、未だエクソン領域に有意な変異は見つかっていない。今後、動脈閉塞患者に関してスクリーニングを行う。腫瘍に関しては、一部の白血病及び神経膠芽種において異常発現が検出されたので病態との関連について検討をはじめた。
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