これまでに経時的に集積したpre成人T細胞白血病(ATL)または低悪性度(慢性型またはくすぶり型)ATLから急性転化した症例の腫瘍細胞を用いて、ATL多段階発癌の後期の悪性形質獲得における外来遺伝子human T-lymphotropic virus type-1(HTLV-1)と細胞性の癌抑制遺伝子の関連性につき検討しつつある。 癌抑制遺伝子p15、p16の欠失は種種の悪性腫瘍で既に報告されているが、その病態との関連については依然不明な点が多い。今回のわれわれの多数例でのサザンブロッテング法による解析では、急性型または慢性型ATL114例中28例(24.6%)でp15またはp16の欠失を認め、多変量解析にてこの欠失は独立した予後不良因子であった。さらには慢性型から急性転化した5例で経時的に検索したところ、うち3例でこの欠失が増悪期に出現していた。以上よりp15、p16遺伝子の欠失による不活化は、既に報告されている癌抑制遺伝子p53の変異による不活化同様、ATLの多段階発癌の後期において重要な1因子であることが示唆された。現在、急性転化時にp15、p16の欠失が出現した症例につきHTLV-1provirusの組み込みパターンの経時的変化の有無を解析中である。 今後は症例をさらに蓄積し、他の癌抑制遺伝子についても不活化の有無を検討する予定である。
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