研究概要 |
細胞増殖・活性化にはチロシンリン酸化反応が深く関わっている。Src型キナーゼの活性はCsk(C-terminal Src kinase)によって抑制的に調節されている。Csk homologous kinase (Chk)は、Cskと同様にin vitroでは、Src型キナーゼc-Src, LynのC末端チロシン残基をリン酸化してSrc型キナーゼ活性を抑制した。しかし、未刺激血小板において、Cskの細胞質局在とは異なり、Chkは膜画分に限局してc-Srcの活性制御には関わらず、CD36会合Lynの活性を選択径に抑制していた。トロンビン刺激によるChkの速やかな細胞内局在変化がLynキナーゼの持続性活性化を誘導した。その際、Cskは細胞質局在を変化させなかった。ChkとCskは同様な基質特異性を示すにも抱わらず、それらの細胞内局在が機能発揮に決定的な役割をもつことが示唆される。さらに、ヒト巨核球系細胞株Dami細胞でも、ChkとCskの細胞内局尾在が異なり、膜結合型Chkがc-SrcではなくLynの活性を選択的に抑制した。ChkとCskのSrc型キナーゼへの機能分担を示すことができた。フィブロネクチン-VLA5インテグリンを介するSrc型キナーゼの活性を調べたところ、Dami細胞伸展の度合いに経時的に対応してLynキナーゼ活性が上昇し、その活性化は持続することがわかった。一方、Chk過剰発現細胞では、このLynの活性化は抑制された。c-Srcの活性は影響されなかった。さらに、Lynのキナーゼ領域を欠損させた変異体を作製したところ、フィブロネクチン依存性細胞伸展およびLyn活性化の両者が抑制されていた。したがって、VLA5刺激によるDami細胞の細胞伸展反応には、Lynの持続性の活性化が必要で、膜結合型Chkは抑制的に機能していた。
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