研究課題/領域番号 |
09671124
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 直人 熊本大学, 医学部, 助教授 (00166620)
|
研究分担者 |
須田 年生 熊本大学, 医学部, 教授 (60118453)
|
キーワード | Csk homologous kinase(Chk) / Csk / Src型チロシンキナーゼ / Lyn / インテグリン VLA5 / 細胞接着 / 細胞伸展 / フィブロネクチン |
研究概要 |
Src型チロシンキナーゼの酵素活性は、増殖因子などの刺激によって一過性の活性上昇を起こし、C-terminal Src kinase(Csk)により抑制的に調節される。発癌遺伝子産物として知られているSrc型キナーゼの変異体は、抑制調節を全く受けずに恒常的活性化を示す。Src型キナーゼとその活性制御機構は、酵母には存在せずに多細胞生物特有である。我々は、Chk(Csk homologous kinase)とCskとのファミリー形成、血液細胞におけるCskとChkの共発現性、血小板における膜結合型Chkを介したLynキナーゼ選択的Src型キナーゼ制御機構の存在を明らかにしてきた。本研究では、細胞接着と細胞伸展の形態変化に関して、血小板で見られた様なLynとChkの相互作用があるかどうか調べた。ヒト巨核球系細胞株Dami細胞は、発現量の多いVLA4インテグリンではなく、VLA5インテグリンを特異的に介して、フィブロネクチンマトリックスに接着し細胞伸展を引き起こした。Chk過剰発現では、フィブロネクチンへの細胞接着は阻害せずに、細胞接着後の細胞伸展反応を阻害した。血小板と同様に、ChkとCskの細胞内局在が異なり、SH3領域を介する膜結合型ChkがLynの活性を選択的に抑制した。フィブロネクチン依存性の伸展反応に対するChkによる阻害作用は、ChkのSH3領域およびChkのキナーゼ活性を必要とした。細胞伸展反応に対応してLynキナーゼ活性が上昇し、その活性化は持続することがわかった。Chkが、フィブロネクチン-VLA5依存性細胞伸展に必要なLynの活性を選択的に制御することが示唆された。したがって、Chkはin vivoではCskとは異なり、Src型キナーゼのうちLyn選択的に抑制活性を発揮することが明らかとなった。
|