研究概要 |
1) p16遺伝子は様々な癌での欠失、変異が報告されている癌抑制遺伝子である。一方、メチル化などのepigeneticな変化もp16遺伝子の抑制を起こす。methylation-specific PCR(MSPCR)による解析でATL細胞での高率なメチル化の存在が示された。さらにsodiumbisulfite処理DNAを用いてPCRを行いdirect sequenceによって塩基配列を決定することによってメチル化を検討した。p16遺伝子は成人T細胞白血病細胞で高率に(89%)メチル化を受けていることを見出した。またメチル化の程度は臨床的に悪性度が増すに従い増強し、それに伴い転写産物量も減少した。脱メチル化を起こす5-aza-2'-deoxycytidineによってp16遺伝子転写は再活性化され確かにメチル化が転写抑制に関わっていることが明かとなった。 2) Fas抗原陰性のATL症例における遺伝子の変異の解析から異常なaltemative splicing産物が多く検出された。正常では認められないexon4,6,exon6,7,exon4,6,7のskippingがあるためframe shiftが起こり、immature terminationのため膜型Fasが産生されないものと考えられる。doxorubicinによるアポトーシス誘導をin vitroでこの細胞を用いて検討した。アポトーシスはpropidium iodideの取り込みをフローサイトメトリーで測定しアポトーシスを起こした細胞の割合でみた。Fas抗原陽性のATL細胞ではdoxorubicin(4μM)の添加によって12時間後に52%のアポトーシスが観察されたのに対してFas陰性のATL細胞ではアポトーシス細胞は10%であり、このATL細胞はin vitroでdoxorubicinに耐性であることが示された。 3) 成人T細胞白血病の進展、発症に関わる遺伝子の同定のために慢性型ATL細胞と非腫瘍の感染細胞のmRNAを用いてDifferential display法により腫瘍細胞で発現が亢進、抑制している遺伝子群を単離しHoxA10などに遺伝子が慢性型ATLで発現亢進していることを見出した。未報告の遺伝子も単離されており、今後、解析を進めていく予定である。
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