研究課題
目的:PNH(Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)の造血動態を知るために、我々はPNH血球のGlycosylphosphatidylinositol(GPI)結合蛋白の発現とアポトーシスとの関連性について検討する。結果:当初、赤血球前駆細胞を対象として行う予定であったが、アポトーシスの評価法で多くの時間を費やすことになった。造血細胞の場合、サイトスピン標本でTUNEL法を行うと部位による染色のばらつきが目立ち、評価が困難であることが判明した。また、Apo-2.7抗体を用いたフローサイトメトリーによるアポトーシスの評価もDigitonin処理による膜透過性を亢進させる方法は不安定で、フローサイトメトリーによるアポトーシスの評価は不適切であった。現在、我々は顆粒球を対象としてAnnexin-VとPIとを用いたフローサイトメトリーによるTwo-color analysisがアポトーシスの評価法として優れていることおよび7-AADによるアポトーシスの評価法も利用できることを確認した。最近、PNH症例の顆粒球を用いて上記の方法でアポトーシスの評価を予備的に施行したところ、必ずしもPNH顆粒球はアポトーシス耐性とは限らないことが判明した。しかし、PNHの顆粒球においてはGPI結合蛋白の発現とアポトーシスとは無関係であることが示唆された。今後は本来の目的である赤血球前駆細胞のアポトーシスについて検討を行う予定である。本研究とは少し異なるが、我々は本研究費の一部を用いてInab phenotype、先天性CD59欠損症および100%PNHIII型赤血球からなるPNH症例の赤血球を対象として、補体溶血感受性試験により補体感受性の検討を行った。その結果、CD59の単独欠損症の赤血球はPNHIII型赤血球とInab phenotypeとの中間の補体感受性を示した。従来、CD59の単独欠損があればCD55の有無とは無関係にPNHIII型赤血球の補体感受性が得られると考えられていたが、この結果は、両蛋白の欠損がPNHIII型赤血球の補体感受性には必要であることを明確にする所見と思われた。
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