FAB分類に従って診断した骨髄異形成症候群(MDS)と骨髄異形成を伴うAMLを対象として、骨髄細胞からゲノムDNAを抽出し、受容体型チロシンキナーゼ遺伝子FLT3傍細胞膜領域の変異検索を行った。その結果、 1.MDS58例中2例(3%)、骨髄異形成を伴うAML34例中5例(15%)、計92例中7例(8%)に異常PCR産物を検出した。その塩基配列解析からは、いずれの症例もexon11内での26から87塩基が繰り返し挿入付加されており、全例でin-frameの内在性tandem duplicationが生じていることが判明した。 2.ゲノムレベルでの変異症例全例で、RT-PCR法により異常mRNA発現が確認された。 3.FLT3異常を有するMDS症例は、いずれの短期間のうちにAMLへの移行がみられた。さらに、AML症例を含めて寛解生存している例はなく、FLT3異常を示す症例は予後不良であった。 4.治療関連性AMLの一例では、発症より34ヶ月経過後の死亡時骨髄細胞DNAではじめてFLT3内在性duplicationが出現していた。また、他のAMLの1例では、診断時の内在性duplicationとは別のduplicationが治療抵抗期に出現し、以降2種類のduplicationが併存・発現している現象が観察された。 以上の結果から、FLT3内在性繰り返し配列付加は骨髄異形成の発症よりむしろ病型進展に密接に関与することが明らかとなった。また、染色体所見・p53変異・EVI1異常発現との相関はないものの、FLT3異常症例にはNRAS変異が多い傾向(7例中3例)にあり、現在さらに症例を追加解析するとともに、他の分子遺伝学的所見との相関を解析中である。
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