研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)とAMLを対象として、骨髄細胞からゲノムDNAを抽出し、受容体型チロシンキナーゼ遺伝子FLT3傍細胞膜領域の変異検索を行った。その結果、 1. 昨年度より解析症例数を増やし、de novo MDS 102例中4例(4%)、de novo AML 43例中6例(16%)、治療関連性AML/MDS21例中1例(5%)、計166例中11例(6.7%)に異常PCR産物を検出した。その塩基配列解析では、いずれの症例もexonll内でのin-frameの内在性tandem duplication(TD)が生じていた。 2. AML/MDSの発症過程は、染色体欠失型と転座型で異なることが提唱されている。解析症例を5q-や-7/7q-を認める群(欠失群)と正常核型あるいは染色体転座群に分け、FLT3-TDの頻度を比較したところ、欠失群では45例中1例(2%)のみであったが、転座群では121例中10例(8%)と後者に多い傾向にあった。一方、NRAS変異は染色体所見で差を認めなかったが、p53変異は欠失群に有意に多く(53%vs1%,p<0.0001)、マイクロサテライト領域を利用して解析したreplication errorも欠失群に多かった(38%vs8%,p<0.05)。 3. AMLに移行したのち治療抵抗性になってはじめてFLT3-TDが出現した治療関連性MDSの一例では、exonll内2か所でのduplicationが生じていることが塩基配列から明らかとなった。これまでに報告されたことのないFLT3-TDのパターンであり、その発生機序を考案するうえで極めて示唆に富む一例と考えられた。 以上の解析結果に加えて、FLT3-TDによって生じる症例特異的な塩基配列部にprimerを設定し、PCRを用いた微少残存病変の評価を行い、その臨床像との対応を現在検討中である。
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