本研究によって骨髄異形成症候群(MDS)におけるFLT3内因性繰り返し配列付加(FLT3-ITD)のもつ臨床的意義のいくつかが明らかとなった。 すなわち、 1)FLT3-ITDはMDSの約5%に見出されるが、AMLではその頻度は上昇し、MDSでも芽球の増多を伴った病型に多いことから、MDSの発症よりもむしろその後の急性白血病移行に密接に関連した。 2)FLT3変異症例での時系列的な解析結果からも、病型進展とともに出現する二次的な変化であることが示され、MDS-AML sequenceに想定される多段階白血病発症過程においては、N-RAS変異と同様に晩期の異常と位置付けられた。特定の染色体・遺伝子異常との相関は見出せず、そのこと自体が、p53変異やRERが染色体欠失群に集中する現象とは対照的であった。 3)より臨床的には、FLT3-ITDによって生じる症例特異的な塩基配列部分は、骨髄内や移植片中の微小残存病変(MRD)の検出に応用可能であり、今後、その方法論の確立されることが期待される。 4)FLT3-ITDのもつ分子基盤は未だ不明の点が多いものの、その臨床的意義の一つとして、AMLと同様にMDSにおいても明らかな予後不良因子であることが予想される。 これらの所見のevidenceを確かなものにするためにも、今後MDS/AML症例の集積によってFLT3変異の生物学的意義を検討する必要がある。
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