研究概要 |
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)における自己抗体の特異性を同定し,抗原分子のエピトープを決定することは,臓器特異的自己免疫性疾患における特定の生体構成成分に対する免疫寛容の破綻機序を探るために重要なアプローチである。そこで,申請者らは,自己抗原の特異性を特定する目的で,リコンビナントRhcEならびにRhD発現細胞を作成し,これらを用いて,フローサイトメトリーで抗赤血球自己抗体の特異性解析を試みた。解析した21例の自己抗体中9例はRhcEとも反応した。3例の自己抗体はRhDとの反応が認められたが,2例はRhcEとも反応した。また,3例のCoombs陰性AIHAのうち1例において,RhcEパネルセルとの反応性が認められた。さらに,アルドメットによる薬剤性AIHAと診断された症例の自己抗体もRhcEと特異的に反応した。21例中10例(47.6%)の自己抗体にRhポリペプチドとの反応性が認められたことになり,温式AIHAの主要自己抗原としてRhポリペプチド,とりわけRhcEポリペプチドが重要な役割を演じていることが明らかになった。また,他のRh抗原発現細胞を加えた解析の結果,これらの自己抗体の認識エピトープは,Rh抗原特異的エピトープではなく,Rhポリペプチドに共通するエピトープであることが示唆された。
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