エリスロポエチン(Epo)遺伝子は、ヘム蛋白である酸素センサーを介して転写因子の均衡によりその発現が調節されている。我々は、Epo遺伝子上CAP部位より-30bp上流のGATA配列にGATA転写因子が結合してEpo遺伝子発現を負に制御していることを報告した。またH_2O_2をHep3B細胞に添加するとEpo蛋白が低下するがその機序として、GATA転写因子のプロモーター活性が亢進し、GATA発現レベルが亢進することによりEpoプロモーター活性」が低下し、Epo遺伝子発現が低下する機序を明らかにした。一方腎性貧血は、Epoの産生部位であるperitubular capillary endothelial cellの障害のためにEpo産生が低下することがその原因とされていた。しかし、腎不全でもEpo産生能は保たれ貧血の認められない症例も多く存在する。よって腎性貧血の原因は単にEpo産生部位の障害だけでなく酸素センサーの障害あるいはEpo遺伝子の転写因子の調節不均衡もその一因であると考えてきた。最近、腎不全患者血清に著増することが認められたNO合成酵素(Nitric oxide syntase : NOS)拮抗阻害物質であるN-Monomethyl-L-arginine(L-NMMA)を用いて解析を試みた。このL-NMMAをHep3B細胞へ添加するとEpo mRNAおよび蛋白が低下することを認めた。これはL-NMMAがEpoの他の転写因子は介さずに、GATA転写因子の結合活性を亢進させ、GATAの発現レベルが亢進することによりEpoプロモーター活性が低下しEpo遺伝子発現が低下するためであり、腎性貧血におけるL-NMMAの新しい機序を解明した。しかし現在までに明らかとなっているEpo遺伝子のcis-elementはすべて肝でのLiver Inducible Element(LIE)であり産生部位である腎でのKidney Inducible Element(KIE)は未だ解析されていない。そこで、ヒト・マウスEpo遺伝子をphage libraryよりscreeningし現在transgenic mouseの系でKIEを解析中である。
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