本研究は、これまでATL細胞株において異常発現を見出した2つの転写因子、ISCATおよびGATA-4 が、(1)実際の造血器悪性疾患検体でのmRNAの発現レベルを検出することによって、疾患とどの程度関与してるかを検討する、(2) ATL 細胞株でのこれらの遺伝子のプロモーターの活性化部位を検討して、 ATL における腫瘍化の機構を探ることを目的とした。(1)当該期間内に得られたATL臨床検体は2例、その他白血化悪性リンパ腫4例 CML6例、多発性骨髄腫9例、ヘアリーセル白血病1例の22例についてRT-PCRを実施したが、いずれも検出感度以下であった。ATL症例はいずれも好酸球増多を示さない症例であり、これが、検出できなかった理由かもしれない。他施設その共同研究により、ATL 検体の集積を計画中である。また、腫瘍性疾患での発現が少なかったことから、これらの遺伝子はウイルス感染に間連した疾患に発現するものかもしれないと考えられており、今後、ウイルス関連疾患の検体も検討していきたい。(2)ISCAT、GATA-4遺伝子の5'領域をヒト胎盤ゲノミックライブラリーより得て、そのうちの約2kbをルシフェラーゼ遺伝子の上流に接続し、 HTLV-1のトタンスアクティベーターであるTaxとともにJurkat細胞株にコトランスフェクションしたところ、転写活性化が認められた。プロモーター領域の欠失変異を作成して、転写調節領域の決定を試みているが、いまだ決定的な領域を同定するには至っていないので、今後さらに検討を要する。本来はATL細胞株を用いてトランスフェクションを行うべきであるが、効率の良い方法が見いだせないでいる。
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