ヒト・フォンビブランド因子の糖鎖の生理機能と活性化メカニズムの解明

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671139
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 藤田保健衛生大学
• 研究代表者: 松井 太衛 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助手 (90183946)
• 研究分担者: 千谷 晃一 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (60179942)
• キーワード: フォン・ビルブランド因子 / ABO血液型 / ビチセチン / 一次構造 / 骨髄移植 / ELISA / セリンプロテアーゼ / ブラジキニン

研究概要

1.クサリヘビ科Bitis arietans蛇毒から精製された、vWFの活性化誘起因子であるビチセチンの全一次構造を決定した。ビチセチンはボトロセチン同様、C型レクチン様構造を持ったα、β二つのサブユニットがS-S結合を介してヘテロダイマーを形成していた。しかし、ボトロセチンとのアミノ酸配列の相同性は45%程度と低く、特にβ鎖で塩基性残基の割合が高かった。(Res.Commun.Biochem.Cell.Mol.Biol.1:1997,in press)。ビチセチンによるvWF活性化メカニズムを探るため、vWF上のビチセチン結合部位をvWFのドメイン認識抗体やプロテアーゼ断片を用いて調べたところ、ビチセチンはvWFのA1ループドメイン内に結合し、ボトロセチンの結合サイトに近いが同一ではないことが示唆された。
2.HLA一致、ABO不敵合の同種骨髄移植患者における血漿vWF上のABO血液型抗原をELISA法で調べた。移植後60-90日で赤血球表面抗原はドナーの血液型に完全に移行したのに対して、vWF上の抗原は全くドナーの型には移行せず、レシピエンドの血液型を保持することが明らかになった。
3.マムシ毒からハリスターゼと名付けた新しいセリンプロテアーゼを精製し、全一致構造を決定するとともに性質を調べた。ハリスターゼはヒト・フィブリノーゲンのBβ鎖とAα鎖を切断するが、トロンビンとは異なる部位で切断し、フィブリン・クロットを形成しないこと、血漿キニノーゲンからブラジキニンを遊離させ、血圧を降下させることなどが明らかになった(Eur.J Biochem.1998,in press)。

研究成果

• [文献書誌] Matsui,T.et al.: "Complete amino acid sequence of bitiscetin,a novel von Willebrad factor modulator protein purified from snake venom of Bitis arietans." Res.Commun.Biochem.Cell Mol.Biol.1(in press). (1997)
• [文献書誌] Matsui,T.et al.: "Purification and amino acid sequence of halystase from snake venom of Agkistrodon halys biomhoffii,a serine protease specifically cleaving fibrinogen and kininogen." Eur.J Biochem.(in press). (1998)
• [文献書誌] Matsui,T.et al.: "Kaouthiagin,a metalloproteinase purified from Naja kaouthia cobra venom,specifically binds to and cleaves von Willebrand factor." Blood. 90. 466a-(abs) (1997)
• [文献書誌] Ozeki,Y.et al.: "D-Galactoside-specific lectins from the body wall of an echiuroid (Urechis unicinctus) and two annelids (Neanthes japonica and Marphysa sanguinea)." Comp.Biochem.Physiol.118B. 1-6 (1997)
• [文献書誌] Uchiyama,H.et al.: "Distribution and localization of galectin purified from Rana catesbeiana oocytes." Glycobiology. 7. 1159-1165 (1998)