研究概要 |
ATBF1遺伝子は4個のhomeodomainと多数のzinc fingerをもつ転写因子で、ATBF1-Aは404kD、ATBF1-BはN-末が短い306kDの2つのisoformを持つが、それぞれの役割は明らかではない。マウステラトーマ細胞株P19にレチノイン酸(RA)を添加し、ATBF1-A mRNAの発現を調べると、分化前には発現はわずかであったが、RA添加6時間で20倍以上になり、神経細胞へ分化すると約50倍に発現の増強が認められた。このtransriptが404kDの蛋白を発現しているかどうかを明らかにするため、以下の実験を行った。まずhomeodomain 1に対する抗体を作製した。トランスジェニックマウスのfibroblast及びヒト神経芽細胞腫より蛋白を抽出し、Western blot法にて404kDのATBF1-Aを核内より検出した。このことからATBF1-Aは単一のポリペプチドとして機能していることが明らかとなった。P19細胞にall-trans RA (ATRA)を投与すると形態学的に神経細胞へ分化前からATBF1-Aの蛋白の発現が増加し、神経細胞に分化するとプラトーに達した。RAレセプター(RAR)-α欠損変異株ではATRAを投与してもATBF1-A蛋白の誘導はごくわずかであった。オカダ酸を添加すると、P19の神経分化とATBF1-Aの発現が著明に低下した。このことからATBF1-Aの誘導はRAR-αおよびprotein phosphatase 2Aを介したものであり、プロモーター活性の上昇によるものであることが強く推察された。RAに反応して分化する急性骨髄性白血病株HL60を用いてp21(waf1,cip1)の発現を調べると、p21の発現は分化に伴い増強を認めた。しかしながらATBF1-Aの蛋白レベルの誘導は非常に弱かった。これはHL60のRAR-αの発現が弱いことによるためと考えられ、RXレセプターαに結合する9-cis及び13-cisRAについても検討中である。現在ATBF1-Aの発現制御領域にCATを結合させたconstruct及び発現制御領域を一部分を欠損させたconstructを作成し、HL60にtransfectしてATRA、9-cis及び13-cisRAのCAT活性の増強をみている。
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