研究概要 |
ヒト膜性腎症モデルであるラット・ハイマン腎炎の病因抗原の同定と、発症機序の解明の研究を行った。ラット近位尿細管刷子縁を含む分画をプロナーゼ処理して可溶化し,それをゲル濾過分離用アクリラマイド・ゲル電気泳動等を行い、単一のバンドとして抗原を取り出した。さらに、それを高速液体クロマトグラフィーにかけさらに精製度をたかめた。この様にして得た抗原を、同種ラットに免疫すると6-8週後には、典型的な膜性腎症が発症した。次に、この抗原を用いてモノクロナール抗体を作成し、この抗体を用いて蛍光抗体間接法により、腎炎ラットの糸球体基底膜に沈着する免疫複合体が、我々の分離した抗原より構成されていることを明らかにした。すなわち、病因抗原を分離し得たことになる。この病因抗原は近位尿細管、十二指腸上皮にのみ存在し、糸球体には存在していない。この分離した抗原をモモクロナール抗体を結合したアフィニティ・カラムを用いて、さらに精製した。精製抗原の分子量は約120キロダルトンで、アミノ酸分析の結果、アミノペプチダーゼ・Nと相同性がみられた。目下、正確なアミノ酸分析と、それに基づいてDNAプローブを合成し、病因抗原のmRNA発現部位を明確にすれば、現在、論争の的となっている腎臓に於ける病因抗原の局在部位について結論を下すことが可能となる。更に、病因抗原のELISA法による微量測定法を確立し、病因抗原の血中における存在と、腎炎発症時の動態を経時的に測定して、腎炎発症機序の解明を試みる。
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