1.慢性原発性糸球体腎炎患者(微小変化型、巣状分節状糸球体硬化、IgA腎症)および糖尿病患者の同意に基づき腎生検を施行し、新規に採取し得た23例の腎組織を、抗pp125FAK抗体にて間接蛍光染色(IF)を行った。全例においてFAKは、腎尿細管の一部を特異的に染色した。この部位に関しては、現在詳細な検討を行っているが、現在のところ確定していない。一方、腎糸球体においてはFAKを染色は弱く、その染色部位は同定できていない。これは一つには、IFによる感度が十分でないことが考えられ、また、共焦点レーザー顕微鏡を用いても十分ではなかった。現在電子顕微鏡を用いた検討のための準備中である。 2.糖尿病性腎症によると考えられる腎不全患者6名の末梢血単核球からgenomic DNAを分離し、WT1の各エクソンに対するprimerを用いて、SSCP法にてmutationを解析している。エクソン1〜4に関しては終了しており、5カ所に塩基の置換を認めたためシークエンスを試みたが、アミノ酸レベルでの置換は起きないことがわかりnon-sense mutationと考えられた。今後エクソン近傍のイントロンに対してもSSCPが必要かどうか検討する。 3.自然発症NIDDNラット(OLETF)を飼育中で経時的に糸球体、髄質などを腎臓から分離し、蛋白およびmRNAを蓄積している。 4.正常ラット腎糸球体より糸球体上皮細胞(GEC)の培養を行っている。継代培養は困難であるが、短期間の培養は可能になってきた。また、GECはin vitroにおいても細胞増殖能が少ないと思われるが、この増殖能とWT1の関係に着目し現在WT1の機能を抑制した場合のGECの増殖能の変化を検討している。
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