腎の近位尿細管は糸球体で濾過されたNaCIおよび重炭酸の大半を再吸収しており、体液の恒常性維持にとって極めて重要な役割をはたしている。一般にこの再吸収過程は管腔側膜に存在するNa/H交換輸送体の働きによるとされているが、必ずしもこの輸送体だけでは説明できない現象も報告されている。そこでまず我々は単離したウサギのin vitroの近位尿細管がin vivoにおける機能を保っているかどうか電気生理学的手法を用いて詳細に検討した。その結果、in vitroの尿細管は細胞内電位が浅く、細胞内Na濃度が著しく増加しており、これらの異常の原因は少なくとも一部はNa/K ATPaseの機能低下によることを明らかにした。さらにこうしたin vitroにおける尿細管機能不全は組織培養液とノルエピネフリンの併用刺激にてほぼ回復することを見つけ、報告した。次にこれらの知見をふまえ尿細管管腔内のpHを蛍光色素にて測定する方法を用いてこの部位の酸分泌機構を解析した。その結果、in vitroの尿細管はin vivoに比べて酸分泌能が低下しているものの、やはり組織培養液とノルエピネフリンの併用刺激により酸分泌能がかなり回復することが判明した。またこの過程でNa/H交換輸送体以外に、Na非依存性の酸分泌過程が存在し、この過程はプロトンポンプ阻害剤には影響されないが酸・有機酸共輸送体阻害剤により有意に抑制されることも明らかになった。以上の知見は近位尿細管の酸分泌機構を理解するうえで極めて重要であると考えられ、今後この有機酸輸送体の本体を解明すべくさらなる解析を続ける予定である。
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