研究概要 |
上皮細胞ではさまざまな膜蛋白が上皮側および基底側に特異的に局在することが、物質の方向性輸送などの上皮細胞機能を果たすうえで極めて重要である。腎尿細管細胞においては、嚢胞形成時などに尿細管の形態異常と同時に様々な膜蛋白の局在異常が生じることが知られている。我々は膜蛋白の一つであるNa/H交換輸送体1(Na/H exchanger1,NHE1)の生理的状態における局在をコラーゲン膜上に培養した腎尿細管細胞(LLC-PK1細胞,OK細胞)を用いて検討した。LLC-PK1細胞細胞では内因性にNHE1が基底側に発現していることをアンチセンスオリゴを用いた実験により確認した。またOK細胞に外因性に導入したNHE1も同様に基底側に発現することを確認した。尿細管の形態形成機構を解明する目的で、腎尿細管由来細胞であるMDCK細胞を、コラーゲンゲル中で3次元的に培養した。通常MDCK細胞はこの条件では管状構造は呈さず腎嚢胞に類似する嚢胞を形成し、管状構造を生じさせる因子としてはHGFしか知られていない。我々はMDCK細胞のクローン化をしてゆく過程において、牛胎児血清依存性に尿細管様の管状構造を呈する細胞(C4)と、嚢胞を形成する細胞(C1)を分離することができた。これらの細胞のmRNAの発現の違いを、約9000の異なるcDNAを固定したDNAチップを用いて体系的に検討し、fibronectinの発現がC1では低下していることを明らかにした。fibronectin発現低下が嚢胞形成に関与している可能性が示唆される。なお、fibronectinが膜蛋白の局在に及ぼす影響に関してはさらなる検討が必要である。
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