本研究期間内に、我々はCLCクロライドチャネルについて、その生理的役割と病態とのかかわりについての理解を深めることにつながる以下の成果を得た。 1) 腎臓特異的なCLCクロライドチャネルであるCLC-K2の異常が、ヒトでバーター症候群を引き起こすことが明らかになり、その原因を明らかにするために、腎臓内でのその存在部位を同定することを試みた。CLC-K2はCLC-Klと蛋白レベルでの相同性が非常に高く、クローン特異的な抗体作成が非常に困難であるため、in situ hybridization法により決定した。その結果、K2は太いヘンレの上行脚、遠位尿細管に存在することが明らかになり、これらの尿細管での経上皮クロライドイオン再吸収に関与していることを明らかにできた。 2) CLC-K2と非常に似ているクローンであるCLC-K1クロライドチャネルの腎臓での役割の解明を目差し、CLC-K1ノックアウトマウスを作成した。K1は以前の免疫染色の結果から、腎臓髄質内層の細いヘンレの上行脚の細胞膜上に存在し、この部位での経上皮クロライドイオン輸送にかかわり、腎髄質内層での対向流増幅系に重要であろう、つまり尿濃縮に重要であろうと考えられていたが、特異的な阻害剤などがなく、生体でのCLC-K1の役割は未確定であった。CLC-K1ノックアウトマウスは、腎性尿崩症を呈し、水なしでは2日と生きられないなど著明な尿濃縮能低下をしめし、CLC-K1の生体内での役割を特定することができた。 その他、CLC-K1クロライドチャネルがZn感受性があることを発見し、この特徴を用いてこのクロライドチャネルの構造機能相関について研究を継続中である。 これ以外のクロライドチャネルCLC-5については、細胞内膜系のクロライドチャネルであることを、モノクローナル抗体を作成し、腎臓近位尿細管のエンドソームにHポンプと共存していることで証明した(投稿中)。
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