研究課題/領域番号 |
09671156
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢尾板 永信 新潟大学, 医学部, 助手 (00157950)
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研究分担者 |
木原 達 新潟大学, 医学部, 教授 (80018324)
山本 格 新潟大学, 医学部, 助教授 (30092737)
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キーワード | 腎臓 / 糸球体 / 上皮細胞 / 足細胞 / カドヘリン / プロトカドヘリン / FAT |
研究概要 |
腎糸球体上皮細胞間接着装置のカドヘリンスーパーファミリーを同定するため、各種カドヘリン間に共通する共通のアミノ酸配列よりdegenerate primerを作製しRT-PCRを行った。増幅された130bpのシークエンスを行った結果、プロトカドヘリンに属する多くのクローンが得られたことが分かった。これらをプローブとして用い、ribonuclease protection assay(RPA)にて、糸球体、腎皮質、腎髄質におけるmRNAの量を比較し、糸球体に特異的に多く存在するクローンを選別した。その結果、8種類のクローンが同定され、この中で、メッセージ量が多いクローンについて解析を進めた。このcDNAは、human FAT proteinにhomologyが高く、アミノ酸レベルで90%の一致を示し、rat FAT proteinに相当するものであることが分かった。細胞内領域のprimarを用いたPCRでは、C末端のアミノ酸配列はヒトと100%一致することがわかった。C末端のアミノ酸配列に相当するオリゴペプチドに対するアフィニティー精製抗体を作製し、糸球体のhomogenate及びexpression vectorをもつ大腸菌のWestern blottingより、この抗体の特異性を確認した。またこの抗体は、NRK培養上皮細胞の細胞同志が接する部位を強く染め出した。以上のFATに対するcDNA、 特異抗体を用いて、ラット正常及びPAN腎症の腎、新生児腎を検討した。RPAでは、ラットの系統間でシグナルの強さに差はあるものの、正常腎糸球体に有意に発現していることが示され、in situ hybridizationでは糸球体上皮細胞に陽性所見がみられた。免疫染色では基底膜にそって、上皮側に有意な染色が観察され、スリット膜に対する抗体(5.1.6)との二重蛍光抗体法では、両者は一致することが確かめられた。またPAN腎症においては、RPAにて糸球体の発現は有意に上昇し、in situ hybridization、免疫染色においても糸球体上皮細胞における染色性の増大が示された。糸球体の発生過程においては、初期より未分化な上皮細胞間に観察され、分化を通じて消失することはなかった。以上より、FATは、生理的な状態ではスリット膜の構成要素である可能性が高く、病的状態、幼弱な糸球体上皮細胞間にもみられることから、糸球体上皮細胞の基本的な細胞接着に関わっていることが推測された。
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