研究概要 |
実験腎炎モデルにおけるケモカイン発現ならびに抗ケモカイン療法の基礎的検討として実験腎炎モデルの一つであるWistar Kyotoラットにおける抗腎糸球体基底膜(GBM)抗体腎炎を用いて,抗macrophage chemotactic activation factor(MCAF/MCP-1)抗体療法の短期(2週以内)ならびに長期(8週以上)効果を検討した. 抗MCAF/MCP-1抗体を抗GBM抗体と同時投与することによりED-1陽性単球/マクロファージ浸潤が約25%減少し,増殖細胞数ならびに半月体形成率が有意に抑制され,発症6日目までの蛋白尿の増加をほぼ完全に抑制することを確認した. さらに発症56日目の腎炎機能低下ならびに糸球硬化がこの抗体初期投与により抑制された. これにより早期の単球/マクロファージ浸潤と蛋白尿出現ならびに糸球体硬化進展へのMCAF/MCP-1の関与が示された. さらに,ヒト腎炎におけるケモカイン動態と接着因子の検討として各種腎炎におけるinterleukin(IL)-8,MCAF/MCP-1とCD62p(P-selectin),ICAM-1を免疫組織化学ならびに高感度免疫酵素抗体法(ELISA)により尿あるいは血清(血漿)濃度を測定した. MCAF/MCP-1はループス腎炎(WHOIV型)ならびに高度の尿蛋白を伴う進行したIgA腎症において尿中濃度が上昇し,尿細管上皮を中心にmRNAならびに蛋白発現が確認された. さらに糸球体におけるCD62pとICAM-1発現は白血球浸潤を伴う急性期糸球体障害において亢進し,これと平行した可溶性分子の血清レベルでの増加が認められた. これよりヒトにおいてもケモカインあるいは可溶性接着因子の測定は臨床上有用と考えられた.
|