研究概要 |
腎炎発症後のMCAF/MCP-1の役割を明らかにする目的で抗糸球体基底膜抗体投与後7日目に抗MCAF/MCP-1抗体を初回あるいは追加投与した.腎炎惹起14日目における評価では,腎炎惹起時および腎炎発症7日目の計2回抗MCAF/MCP-1抗体を投与した群では,半月体形成率は対照群に比較して有意に抑制された.一方,腎炎発症後7日目のみに抗MCAF/MCP-1抗体を投与した群では腎炎惹起14日目における壊死性病変の形成率ならびに蛋白尿の増加が対照群と比較して抑制された.これより腎局所で産生されたMCAF/MCP-1が,腎炎発症早期の単球・マクロファージ浸潤・活性化を介して半月体形成性腎炎の発症・進展過程に重要な役割をはたしていることが推測され,ケモカインを標的分子とする新しい腎炎の治療が示唆された.さらに,ヒト腎炎におけるケモカイン動態と接着因子の検討として各種腎炎におけるIL-8,MCAF/MCP-1とEotaxinを免疫組織化学ならびに高感度免疫酵素抗体法により尿あるいは血清(血漿)濃度を測定した.IgA腎症においてMCAF/MCP-1は高度の尿蛋白を伴う進行列において尿中濃度が上昇し,尿細管上皮を中心にmRNAならびに蛋白発現が確認された.さらに糸球体に白血球浸潤を伴う急性期糸球体障害において接着因子(ICAM-1,P-selectin)ならびにIL-8の亢進が認められた.間質内の好酸球浸潤例において尿中Eotaxinの増加を認めた.これによりヒトにおいてもケモカイン測定は臨床上有用と考えられた.
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