研究概要 |
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は,両側腎に嚢胞の多発を認め,典型的には50才台に末期腎不全に至り,透析療法に導入される疾患である。近年における遺伝学的解析の進歩により,その原因遺伝子として,クロモゾーム16にあるPKD1とクロモゾーム4にあるPKD2が解明され,それぞれの蛋白産物であるポリシスチン1とポリシスチン2が膜蛋白として同定され,注目されている。我々は,北陸地方在住で透析療法中のADPKD患者63例(男31例,女32例,年齢59±11歳)について解析を行った。これらの症例の透析導入年齢は50±10歳,全透析患者の5.1%を占めていた。肝嚢胞,膵嚢胞の合併率はそれぞれ86%と16%で,クモ膜下出血の既往を3例に認め,1例は結節性硬化症を合併していた。 また,調査が可能であった5家系について,PKD1近傍のマイクロサテライトマーカー(SM7,SM5B,KG8,SM6)を用いて検討し,高い確率でPKD1家系であることを明らかにした。その他の症例についても家系調査の協力を要請し,鋭意解析を行っている。さらに,PKD1遺伝子のうち重複のない部分について,それぞれのオリゴヌクレオチドプライマーを作成し,PCR-SSCP法で上記63例について,遺伝子異常をスクリーニング中である。
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