研究概要 |
1. 正常腎糸球体での各種脂質結合蛋白発現の検討 (1)アシルCoA結合蛋白(ACBP)、リン脂質転送蛋白(PITP)、コレステロール転送蛋白(SCP2)、レチノール結合蛋白(CRABP)の各蛋白について、WKYラットの単離糸球体から調製したPCR産物をpGEM-Tべクターに組み込み、サブクローニングした。個々のPCR産物の塩基配列を確認後、ノーザンブロティング法を行ったところ、各蛋白のmRNAが糸球体、尿細管に存在した(Kidney Int,1999)。(2)各種脂質結合蛋白の抗体作製については、PIPTとSCP2の抗原性の高い部位を選択し、合成ペプタイドを作製し、現在家兎に免疫中である。今後は、腎組織内の局在について検討を進める予定である。 2. 糸球体上皮に特異的に発現するFABPの関連蛋白(110kDa蛋白)の解析 (1)免疫電顕による110kDa蛋白の局在は、糸球体上皮足突起の細胞質であった。WKYラットでは、同蛋白は腎糸球体以外に存在しないことも判明した(Kidney Int,1999)。(2)同蛋白をヒトとラット単離糸球体から2次元電気泳動法にて分離後、電気的溶出法を用いて精製した。蛋白分解酵素で分解後、断片を液体クロマトグラフィーで精製し、その部分アミノ酸配列を決定した。現在約50残基のアミノ酸配列を決定しているが、今後は、さらに解析を進める予定である。 3. 脂質代謝に関連する遺伝子多型と腎症進展の関連性の解析 アポE蛋白はLDL代謝で、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)はHDL代謝で、プラスミノーゲンアクチベ一ターインヒビター(PAI-1)はVLDL代謝で糸球体硬化に関連する可能性が予想されたため、腎障害と遺伝子多型との検討を行った。(1)アポE蛋白のE4型の保因者で、糖尿病腎症の進展が遅延すること分かったが、慢性腎炎の進展とは関連を認めなかった(Am J Kidny Dis,1998;Kidney Int,1999)。(2)PAI-1の転写領域の4G/5G多型は、糖尿病腎症の進展とは関連せず、糖尿病性血管合併症と関連した(Kidney Int,1998)。(3)CETP活性の低下するD442G遺伝子多型は、糖尿病性腎症ならびに慢性腎炎の進展とは関連せず、血管合併症と関連した(J Am Soc Nephrol,1999;Kidney Int,1999)。
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