研究概要 |
我々が確立した若年より高IgA血症を呈し、有意な腎及び脾臓でのTGFβの発現増強を伴い、IgA沈着と腎硬化病変を呈してくるHIGAマウスにおいて、そのIgA腎症様病態の背景にあるTh1/2バランスをさぐり、さらにIL-12投与によるその病態の変化を検討した。 1) Th1/2バランスの検討 Th1,Th2それぞれの特異的な優位性を示すC57BL/6およびBalb/Cマウスと比較した結果、加齢とともに脾臓CD4+細胞のIL-4およびTGFβの産生が増強していることが示された。これはのコントロールマウスでの加齢による低化とコントラストを呈するもので、本マウスに特徴的である。IFNγ発現は若年より他のマウスに比して高かった。また、どのマウスよりもTGFβの発現量は常に多かった。 2) IL12投与実験 病変の発現が完成した30週齢の本マウスに、Th1系を誘導するIL-12を300ng,7日間投与したところ、IgAの血中濃度の低下とともに腎糸球体の有意な細胞性半月体形成と間質細胞浸潤および腎内のマクロファージの浸潤増強を認めた。これは脾CD4+細胞のIL4の産生低下を伴っており、IL-12によるTh2→Th1へのshiftが起こっていることを示している。また元々増強していたTGFβの発現はさらに増強した。一方、本マウスではIFNγの発現もlatentに増強していることから、IL-12によるTh1の誘導が局所でのIFNγのさらなる発現を介して腎実質細胞を刺激するとともにマクロファージを誘い込み、半月体形成を起こしたと考えられる。 以上の所見はヒトIgA腎症の急性炎症性病変増悪及び、その修復後の慢性腎硬化進行を免疫学的に説明しうる病態と考えられ、その意味で本マウスの慢性進行型IgA腎症モデルとしての可能性がさらに示唆された。
|