研究概要 |
ヒトのPGE_2受容体EP_3サブタイプの遺伝子解析を行い、ヒトのEP_3遺伝子が第1染色体上に80kb以上にわたって存在すること、少なくとも10個のエクソンから成り、選択的スプライシングにより9個のmRNAから8個のアイソフォームを生じることを証明した。これらのアイソフォームは組織特異的に発現し、その細胞内情報伝達系も各アイソフォームで異なることが明らかとなった。特に新たに発見された2種類のアイソフォームはMAPキナーゼを活性化することを見い出した。 更に、糸球体障害に深く関係する血小板のプロスタサイクリン受容体IPの発現調節を明らかにするために、ヒトの培養巨核球系細胞を用いてIP遺伝子発現を検討した。巨核球細胞においてPMA,IL-1,IL-3,IL-6,GM-CSF,TPO,TNF-α等の炎症性および巨核球成熟をもたらすサイトカインにより、IPmRNAおよびタン白が増加することを証明した。これは腎炎に際して、PGの産生のみならず、受容体発現も特異的に調節されていることを示唆する所見と考えられた。 また腎臓においてプロスタノイドシステムとその生成、分泌、作用において相互に密接に関連しているレニン・アンジオテンシン系のメサンギウムにおける役割を明らかにする目的でAT_2受容体を検討し、メサンギウム細胞におけるAT_2受容体の発現とその増殖抑制作用を証明した。 現在、IP,TP,EP_1,EP_3ノックアウトマウスの糸球体、尿細管機能について解析を続けている。
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