研究概要 |
ヒトのプロスタグランディン(PG)E_2受容体EP3サブタイプ遺伝子が第1染色体上に存在することを明らかにした。ヒトEP3遺伝子は80kb以上にわたって、少なくとも10個のエクソンから構成され、選択的スプライシングにより9個のmRNAから8個のアイソフォームを生じることが証明された。転写開始点はATGコドンの227〜231bp上流であり、5'隣接領域にはTATA box様配列、GC box、cis-acting regulatory elementが含まれていることが明らかになった。更に糸球体障害に深く関係する血小板のプロスタサイクリン受容体IPの発現調節をヒトの培養巨核球系細胞を用いて検討し、IL-1,IL-3,IL-6、TNF-α等の炎症性サイトカインおよびGM-CSF,thrombopoietin等の巨核球成熟をもたらすサイトカインにより、IPmRNAおよび蛋白が増加することを見い出した。糖尿病性腎症の発症と進展におけるプロスタノイドの役割を解明する目的で、ラットの培養メサンギウム細胞を用いて検討を行った。その結果、高グルコース下でDNA合成能が亢進し、このDNA合成亢進はEP1特異的アンタゴニストにより有意に抑制されることを観察した。その機序として、高浸透圧刺激によりPGE2産生が亢進すること、高グルコース下でEP4によるcAMPの産生低下がおこり、その結果EP1を介するDNA産生が増強されることが明らかになった。ラットのメサンギウム細胞からアドレノメデュリンが分泌され、cAMP産生を介してPDGFによる増殖作用を抑制することを明らかにした。またWKY由来メサンギウム細胞におけるAT2受容体の発現とその増殖抑制作用を証明した。
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